タイトル:「トイレでじろじろ見てくる奴。自分の一物が大きければヨシ!と声を上げる」
内容:金山は俺と同じ大学の同期。トイレに入ると「ヨシ!」と声を上げる癖があった。尋ねてみると昔から自分の一物が隣より大きければ言ってしまうらしい。それは厳かな場所のトイレでも同じだった・・・
登場人物:俺、友人の金山、高僧
それではどうぞ!
大学時代、福岡出身の金山とは体育会ラグビー部の同期であり、学部もクラスも同じだったのでいつも一緒に行動していた。

東北出身の俺とはなぜか気が合って、東京に来て初めて友人といえる存在だった。彼はとてもいい奴でケチをつけるところはないのだが、一つ気になることがあった。
それはトイレでの所作だった。

彼は、小便器の前に立つと必ず隣をジロジロみる癖がある(当然いなければそんなことはしない)。
俺もみられたが、「ヨシ」という声が聞こえてきた。

その時は気のせいだと思いあまり気にしなかったが、
その後も全然知らない人がいても「ヨシ」と言っていた。
怪訝な表情をする人もいれば、なんだコイツと二ラメつける人もいた。

そんな金山に対して私は、その「ヨシ」って何?と尋ねた。
すると彼は、うん・・と俯き加減で、
「これは小さい頃からの癖でさ・・・」と申し訳なさそうにボソボソ答えた。
自分でも止めたいと思っているのだが、その瞬間に立ち会うと無意識のうちに
声を発してしまうらしい。
金山は小さい身体なのだが、大きい相手にも平然と鋭いタックルをかます
ファイターである。
大きいやつには負けたくない、そんな気持ちを小さい頃から持っていたらしい。
実際、金山の一物は立派だった。
身体が大きいやつにも負けないくらい、そして彼も今まで自分より大きいのをみたことない
と豪語していた。
そんな或る日、オフシーズンに入ったので二人で京都へ旅に出た。
お互い、寺や神社に興味があったので有名なところはすでに行ったことが合った。
少しマニアックといえば失礼だが隠れ家的な、それでいてちゃんとした寺社仏閣を巡ろうとなった。
そこで色々調べると日本でも有名な高僧がいると評判の寺をみつけた。
高僧のお話を聴く前にトイレをすまそうと二人で用を足していた。
我々の間は一つ空いていたそこに「どうも」と袈裟を羽織った僧侶が入ってきた。
いかにも修行を積んだ僧侶らしく一切の無駄がない。その表情や所作においても。
多分、この人が高僧だろう・・・私は小便をしながら確信した。
その横で、金山はいつものように隣をじろじろみている。
「おい、やめろよ!」と心の中で叫んだ。
そして彼はいつものように叫んだ。ヨシ!
高僧は何のことやら分からないまま、いや分かっていたのか、
最後までニコニコしながら用をたしていた。
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