駒を動かす指が汚かった…一流棋士
休日に、何か面白い番組がないか探していたら、将棋の番組をやっていた。
ちょうどタイトル戦が行われていたので、観ることにした。
将棋は嫌いではない。
寧ろ、好きな部類に入る。
小学生の時は毎日のように、祖父と対戦していた。
いないときは親戚の家に出向き、一日中打っていた。
祖父は将棋のタイトル戦が大好きで、いつも観ていた。
俺も一緒に観ていた記憶がある。
祖父は棋士の凛とした羽織袴が大好きで、
「ほれ、強い棋士というのは、羽織も似合うだろう」
と、特にお気に入りの棋士に対して良く褒めていた。
中学生になると、祖父も亡くなり、また部活等で忙しくなったので
将棋とは疎遠になっていた。
画面では羽織袴の棋士2人が盤上を睨んでいた。
流石タイトル戦だ、2人の熱気と緊張感が伝わってくる。
棋王はじっくり考えて「銀」に指をかけた。
「先手27銀」
それは、しなやかで、綺麗な指だった。
さすが、棋王。爪の手入れもばっちりだ。
すかさず、挑戦者が駒を動かした。
「後手・・・」
俺は一瞬、唸った。
それは挑戦者の打った手ではない。
挑戦者の指は爪が恐ろしいほど汚かったからだ。
爪は伸び、その間は黒く汚れていた。
また、毛深かった為、指やら手の甲がジャングルのようだった。
せめて、爪を切ってこい!