その分野の権威(偉い人)、四字熟語を間違いすぎ…
新型の感染症患者が増大するに伴い、テレビ番組はこぞって新型感染症関連のニュースや特番を報道していた。
その分野の専門家、コメンテーターを配備し、様々な知見を提供していた。説明が分かりやすい専門
家はどの番組にも引っ張りだこで、朝から夜までどこかの局の番組に出ていた。
数か月すると専門家の顔ぶれも定まってきた。
つかえない、わかりにくい、説明が下手、からみづらい、などの専門家は淘汰されていった。
各局では、生き残った専門家の争奪戦が繰り広げられた。
そんな中、生き残った専門家達が一目置く権威が残っていた。
その分野では誰もが知っていて、尊敬されている人物である。
○○医療大学の名誉教授であり、著書は数知れず。
昨年も著書をだしたばっかりである。
テレビに出て、今が旬の専門家も、学生の時は彼の著書を読み、
大きな影響を受けた。
御年、80歳。
弁舌も鋭く、まだまだ現役である。
その権威がテレビに出演するという。
「○○先生がテレビ出るのだったら、皆さんそっちをみますよ」
「○○先生は様々な背景を踏まえてコメントするので説得力が違います」
などと今が旬の専門家達は白旗を上げていた。
そして、いよいよ権威がテレビに登場した。
白衣を着用し、ピンと姿勢が伸びている。
国民の誰もが、一向に減らない感染者の状況と
ありきたりのコメントにうんざりしていた。
解決策を!安心感を!
番組関係者は、その権威に大きな期待をしていた。
番組が始まった。
司会者と権威のやりとりが続く。
弁舌鋭く、分かりやすい説明だ。
ここまでは順調だ。
「よっしゃー!」
番組関係者は小さくガッツポーズをした。
「緊急事態宣言を解除することに対してどう思いますか?」
司会者は尋ねる。
「え~、時期そうしょうだと思います。そこには3点の理由があります…」
司会者は黙ってうなずいた。
「それでは、今後の政府の政策に対して…」
「え~、○○~○○でありまして、捲土じょうらいを期待しています」
「ここは、佐生うおうしていてもだめだと思います」
「専門家の意見も玉石こんとんとしています」
「正しい情報を…しゃしゅ選択する必要があります」
番組関係者の拳はゆるゆると力をなくしていった。
専門的なコメントはしっかりしていたが、
四字熟語がグダグダな権威だった。