このハゲ〜!見渡すと皆、頭髪に異常が…
梅雨も明け、本格的な暑さが日本列島を覆う。
涼と癒しを求め、俺は後輩と居酒屋へと向かった。
「いらっしゃいませ」
女性店員の張りのある声が酒の世界へと誘う。
店内は混雑していたが、ちょうどテーブル席が空いた。
俺たちはすかさず座ってビールを注文した。
少し疲れ気味の後輩がジョッキを口に運ぶ。
「おおっいいね。飲め飲め。今日は俺の奢りだ。ハハハ」
仕事で失敗した後輩を慰めようと、2人だけの飲み会を企画した。
店内は熱気が充満していた。ほとばしる汗、焼き鳥の煙、タバコの煙…
扇風機の涼ではもの足りなかった。どんどんビールを注文してしまう。
これも店の作戦か。
そして、1時間が経過した。
店内は旦那衆の大きな声が響く。
皆、酒に酔って気持ちが大きくなってきた。
すると、針のように突き刺さる声がその場を貫いた。
「このはげー!」
それは女性の声だった。
一瞬、時間が止まった。空気は呼吸するのをやめたようだ。
扇風機の音だけが響いていた。
声の主はテレビだった。
そこには烈火の如く怒鳴る女性国会議員が映っていた。
その時、店内にいるほとんどの人間がビクッと震えていた。
耳を塞ぎ、背中が丸くなっていた。
皆、なぜか小声になっていた。
見渡すと、頭髪に何らかの異常がみられる野郎ばかりだった。