病院の待合室、外国人の若者が日本名で呼ばれていた…
平日の病院の待合室は一杯だった。
お年寄りが多い。
皆、知り合いなのか仲良く雑談をしている。
だれかが名前が呼ばれると、ほれほれ、呼ばれたよ
と親切に促す。
とてもアットホームな病院だ。
俺の出番はまだまだなのでゆっくり本を読んでいた。
「山本喜八郎さん」
誰も反応しない。
いつもは促すばあちゃんたちも顔をみあわせている。
「山本喜八郎さん」
もういちど看護婦さんが呼びかける。
「山本宗八さんならわかるけど、喜八郎さんってだれかな」
待合室がざわざわしだす。
すると
「ハイ」
と威勢のよい返事がした。
「すいません、ヤマモトです」
奥の椅子から出てきたのは若い黒人の男だった。