大物演歌歌手、大事な場面で声裏返ってしまう…
日本を代表する演歌歌手が文化勲章を受章した。
御年85歳、その歌声は人々の心を揺さぶる。
ヒット曲を数多く歌い上げ、教科書にも掲載された。
海外からの評判も良く、日本を代表する歌手と言えば、
この演歌歌手の名前が一番先に挙がるほどである。
アメリカ大統領が彼のファンということもあり、
アメリカでは爆発的に売れた。
また、バラエティー番組にも多く出演し、
気の利いたコメント、ユーモアに富んだ話、たまには毒舌もいえることから、
老若男女、あらゆる世代に愛される人物である。
その祝いのパーティが都内のホテルで開催された。
芸能界はもちろん、政財界、ハリウッドスター、海外要人などあらゆる分野の人々が集まった。
その中には、現在の総理大臣をはじめ、歴代の総理大臣が顔を合わせた。
それだけ、この演歌歌手の凄さが分かる。
会場はそういう人たちの挨拶、会話で熱気で溢れていた。
突然、会場が暗くなった。
チャーララン、チャチャチャ
最大のヒット曲「浪速の夕暮れ」のイントロが流れだした。
すると、
白い羽織袴姿を纏った演歌歌手が登場した。
オー!
拍手と歓声が響き渡る。
会場のボルテージは最高潮に達した。
85歳になっても、声量は衰えない。
むしろ、渋みが増して、歌詞に重みがでてきた。
そして、誰もが知っているサビに入った。
会場には涙を流している人もいる。
演歌歌手も分かっている。
ここが最大の盛り上がりだと。
感情を込め、サビにはいった
「さ~、な~に~わ~の~、ユウぐ~れ~」
あれ、声、裏返ってなかった?
少し、会場がざわついた。
気のせいだろう。
演歌歌手は平然と歌っている。
また、サビがやってきた。
「さ~、な~に~わ~の~、ユウぐ~れ~」
あれ、また声裏返った。
誰もが気づいていたが、誰も何も言えず、手拍子をしながら聞いていた。