チャウシェスク大統領と言えないアナウンサー…
テレビをつけると、ルーマニアの指導者、チャウシェスク元大統領の特集をやっていた。
チャウシェスクといえば、個人崇拝を巧妙に作り上げ、1974年には大統領となり、独裁を行った
人物である。
その手法は、スターリンと酷似している。国内の少数民族(ハンガリー系)への弾圧、個人崇拝(チャ
ウシェスク賛歌を歌わせる)、批判する人間への粛清などを行い権力を手中に収めた。
また、妻や子どもを政府の要職につけるなどした(トランプ米大統領と似ていますね)。
1989年12月、反発が強まった民衆蜂起によってチャウシェスク独裁政権は
崩壊した(東欧革命)。
眼鏡をかけた男性アナウンサーが専門家に尋ねる。
「このチャウセスク大統領は…」
間違ってしまった。
「あ、失礼しました。チャウシェシェク…」
また、間違った。
「チャウシェクス…」
さらに間違ってしまった。
アナウンサーは、よほど悔しかったのか、自分の頬っぺたを
自分で殴った。
唇から血が流れだした。
自分の眼鏡がずれた。
「すいません、もう一回…」
その目には涙が浮かんでいる。
「大丈夫ですよ。言いにくい名前ですからね。このチャウシェスク大統領は…」
専門家は柔和を浮かべフォローし、一連の説明をする。
とても分かりやすい。
専門家の説明が終わると、
先ほどのミスを挽回しようとアナウンサーがまた、問いかける。
「それでは、チャウシャスク大統領はスターリンの手法を…」
アナウンサーは自分がまたミスをしたのが分からないほど混乱している。
今度は、訂正せずにそのまま流した。
「そうですね、チャウシェスク大統領は…」
専門家は、自分の言葉で訂正した。
アナウンサーは、自分のミスに気づき専門家が発言しているのにも関わらず、割って入っていく。
「す、すいません、チャ・ウ・シェ・スク大統領ですね」
ゆっくり、ゆっくり言うことで成功した。
「そうです!そうです!」
専門家は褒めた。
少し気をよくしたアナウンサーが続ける
「チャウシェ、シェ、セッ、セックス大統領は…」
また間違えた。
しかも、今度は言ってはならない単語を発してしまった。
まだ、若いのにアナウンサー生命が絶たれるほどのミスではないか。
アナウンサーは絶叫し、頭を机にガンガン打ちつけた。
額からは血が、唇から血が、眼鏡は割れていた。
その横で専門家は静かにたたずんでいた。
東欧革命並みの凄惨さだった。
恐るべし東欧革命、そしてチャウシェスク大統領。
時代も国も違うのに、一人の若者をこれほどまでに
狂わせるとは…。