こわもて親父、可愛いフレーズで怒鳴りまくる…
仲のいい後輩が、仕事のことで相談があるというので、
少し話を聞こうと居酒屋に向かった。
「先輩、自分この仕事やめていっすか」
「ん!」俺は焼き魚の身を切り崩していた手を止めた。
「やめるのはいいけど次のあてあるのか」
「以前、働いていた柴田さん、覚えています?」
「おお、覚えているよ」
「柴田さん今、正社員で働いていますよ。この間、偶然コンビニで会って。スーツ着ていました。うちの会社に紹介するから履歴書持ってこいと言われました」
「それで渡したのか?」
「はい、次の日に渡しました」
「しかし気をつけろよ。この辺の連中なんて酔うと気が大きくなるからよ。普段気が小さい奴ほどその傾向が強いぞ。さあ、そろそろ二件目にいこうぜ!」
伝票を持って出口に向かうと後輩の様子がおかしい。鋭い目つきで隅のテーブルを睨んでいる
視線の先にはスキンヘッドでこわもての親父が大声を出していた。
店員は注意をしようかウロウロしている。
「いいか、俺のメアド教えるからメモしとけ!」
「もこちゃん、みほちゃん、アットマーク……。だーかーら、もこちゃんはm・o・c・h・a・nだろーが!」
かわいいフレーズが親父の怒鳴り声に乗って
居酒屋に響いた。